ポジションクローズとは?違法なケースや退職勧奨への対処法を解説
更新日:2026年8月25日
目次
- ポジションクローズとは
- ポジションクローズが行われる理由
- ポジションクローズの違法性
- ポジションクローズでの異動・配置転換
- ポジションクローズでの退職勧奨・解雇
- ポジションクローズにおける退職金
- ポジションクローズへの対処法
- まとめ
このページのまとめ
- ポジションクローズとは、アメリカや外資系企業において特定の職務を廃止すること
- ポジションクローズが実施される理由は組織再編や人員削減、実質的なリストラなど
- アメリカには、違法なポジションクローズから労働者を守るための法律や例外規定がある
- ポジションクローズを告知された際は、退職合意書を入念に確認する
- 必要に応じて、ポジションクローズの退職合意書について弁護士に相談する
「ポジションクローズとは何?」「解雇されたらどうしたらよい?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
ポジションクローズとは、アメリカや外資系の企業において実施される、職務の廃止のことです。
本記事では、ポジションクローズの定義や行われる場面を紹介します。また、違法とされるポジションクローズの内容や退職金の取り扱い、対処法についても解説するので、アメリカでキャリアを築く人は参考にしてください。
ポジションクローズとは、アメリカや外資系の企業において、特定の職務(ポジション)そのものを廃止することです。
アメリカでは伝統的に「随意雇用(employment-at-will/どのような理由であっても、あるいは理由がなくても、雇用主はいつでも解雇できる原則)」の原則が適用され、書面による特別な雇用契約がないかぎり、雇用主は理由の有無にかかわらずいつでも従業員を解雇できます。そのため、ポジションクローズはそのまま「雇用の終了(解雇)」を意味することが一般的です。
アメリカの企業がポジションクローズを行う背景には、やむを得ない経営上の変化や雇用主の意図が存在します。
ポジションクローズが行われる主な理由は、事業規模の縮小・部門の統合・人員の削減・実質的なリストラです。
ここでは、企業が職務の廃止を決定してポジションクローズを実施する理由について解説します。
事業規模を縮小するから
ポジションクローズが実施される要因の一つに、外部環境の変化に伴う企業のビジネス規模縮小が挙げられます。
アメリカ企業は市場の動向や不況に敏感であり、経済状況の変化に直面した際には、企業の存続のために労働力自体を迅速に削減しようとするケースがあります。その結果、特定の事業領域に属していた職務そのものが不要となり、該当するポジションがクローズされることになります。
部門の統合を行うから
企業がポジションクローズを行う理由の一つは、部門の統合です。
アメリカ企業における部門統合に伴うポジションクローズは、主にコスト削減と組織の効率化を優先して行われます。
複数の部門が1つにまとめられると、各部門に存在していた同じ役割(マネージャー職や管理部門など)が重複します。新組織では最適な人員配置が求められるため、重複したポジションはクローズされます。特にアメリカ企業では「人ではなくポジションに対して雇用が生まれる」という「ジョブ型雇用」の考え方が定着しているため、その枠組み自体が不要になれば合理的かつ迅速にクローズされます。
人員を削減するから
ポジションクローズが実施される理由には、人員削減が挙げられます。
アメリカでは、業績悪化に伴うレイオフが実施されることがあります。コスト削減を目的に、対象職務のポジションが一斉にクローズされる事態が起こります。
このような人員整理のプロセスでは、個人の能力や勤務成績にかかわらず、特定の職種や部門の役割そのものが組織からまるごと排除されることもあるでしょう。
狙い撃ちのリストラがしたいから
表向きはポジションクローズを装い、実質的に特定の個人を狙い撃ちにした解雇が行われるケースもあります。
たとえば、間もなく定年を迎えて退職金・年金を受け取るはずの従業員に対し、支払いを回避する目的でポジションクローズを実施した事例がありました。
アメリカは理由なく解雇ができる国であると誤解されがちですが、ポジションクローズを口実にした解雇がすべて合法となるわけではありません。労働者の生活や権利を保護するため、司法や法律は雇用主の解雇権を制限する重大な例外や禁止事項を設けています。
ここでは、どのような場合にポジションクローズに伴う解雇が違法とみなされるのか、その具体的な法的基準を解説します。
公序良俗の例外
雇用主による自由な解雇を制限する判例法上のルールの一つは、「公序良俗の例外(Public-policy exception)」で、アメリカの多くの州で認められています。州の明確な公共の利益に反する理由での解雇は、たとえ職務廃止を理由としていても違法と判断されます。
たとえば、業務中に怪我をして労災補償を請求した従業員のポジションを廃止して解雇することは、労働者の正当な権利を侵害するため、違法です。
また、雇用主からの法律に違反する行為の指示を正当に拒否した従業員を、報復としてポジションクローズを実施して排除することは、不法行為にあたります。
黙示の契約の例外
書面による正式な契約書がなくても、雇用主の言動によって契約関係が成立しているとみなされる「黙示の契約の例外(Implied-contract exception)」は、アメリカの多くの州で承認されています。雇用主が保証した内容に違反するポジションクローズは違法です。
たとえば、採用時などに「成果を出すかぎりポジションクローズされることはない」といった具体的な口頭保証があった場合、これが契約の一部とみなされることがあります。
また、就業ハンドブックに「解雇には正当な理由を必要とする」などの手続きが明記されている場合、企業はこれを遵守しなければならず、無視した解雇は契約違反です。
誠実および公正な取引の義務の例外
雇用関係の根底にはお互いに誠実で公正に接する義務があるとする「誠実および公正な取引の義務の例外(Covenant-of-good-faith exception)」は、一部の州で認められています。このルールは、悪意や不当な動機に基づくポジションクローズを禁じる強力な盾となります。
たとえば、企業が支払いを免れる目的で、長年勤務して間もなく退職金や年金を受け取るはずの従業員を、ポジションクローズと称して解雇することは違法です。実際に、このような不当なポジションクローズの事例では、裁判において従業員に損害賠償を請求する権利が有すると判断されました。
差別的な解雇は禁止
随意雇用の原則にかかわらず、特定の属性を理由にしたポジションクローズや解雇は、アメリカの連邦法によって厳格に禁止されています。
1964年公民権法第7編(Title VII)や高年齢者雇用保護法(ADEA)などに基づき、人種・性別・年齢・宗教・出身国による差別を理由に解雇対象を決定することは禁止です。
また、従業員15人以上の企業ではアメリカ障害者法(ADA)が適用されます。身体的または精神的な障害がある人や、そのような障害の病歴・記録がある人に対して、障害を理由とした解雇や差別は違法です。
職場の安全違反などの通報に対する報復は禁止
職場の環境や安全性に関する重大な違反を政府機関へ通報した従業員を、ポジションクローズを名目に実質的な報復として解雇することは、連邦法によって厳格に禁じられています。
危険な作業環境を告発したことに対して、企業が通報者の従業員のポジションを廃止して不当に職場から排除することは許されません。
また、企業の違法行為や不正を内部または外部機関に告発した従業員を、ポジションクローズを建前に解雇することは違法な報復行為に該当します。
参照元:
アメリカ労働統計局(BLS)-The employment-at-will doctrine: three major exceptions
アメリカ雇用機会均等委員会(EEOC)-Q&A-Understanding Waivers of Discrimination Claims in Employee Severance Agreements
アメリカ雇用機会均等委員会(EEOC)-Title VII of the Civil Rights Act of 1964
アメリカ雇用機会均等委員会(EEOC)-Age Discrimination in Employment Act of 1967
アメリカ司法省公民権局(ADA)-Introduction to the Americans with Disabilities Act
USAGov-Labor laws and worker protection
ポジションクローズの際、企業は直接的な解雇を行う代わりに、従業員を別の役職や別拠点のポジションへ異動・配置転換することがあります。
アメリカ企業における異動は「昇進や降格を伴わないポジションの変更」と定義され、雇用主にはこれを指示する広範な裁量権が認められています。
しかし、他州への転居を伴うような遠隔地への異動指示を断って辞める場合、これが「自己都合」か「会社都合(レイオフ)」になるかは、その後の退職金や失業手当の受給に大きく関わります。そのため、雇用主と労働者の間で争点となるケースがあります。
アメリカ政府人事管理局(OPM)などの米国政府の公的な基準において、ポジションクローズなどによって転居を余儀なくされるような通勤圏外への異動を断って失職する場合は、労働者の権利が保護されるべき「合理的な拒否」として扱われる傾向にあります。
民間企業においても、ポジションクローズでの異動・配置転換について公的な定義が判断基準として用いられることが多いです。
参照元:アメリカ政府人事管理局(OPM)-Summary of Reassignment
ポジションクローズによる職務の廃止に伴い、企業が従業員に対して解雇という明確な手続きを踏まず、自己都合による退職を促すケースがあります。
本来、従業員自身の意思による「自発的退職」と、雇用主が主導の「非自発的な離職」は区別されます。企業が従業員を追い詰めて辞職を強要することは、不当解雇に該当する可能性が高いです。
労働者は、企業側がどのような手段で雇用を終わらせようとしているのかを注意深く見極める必要があります。
参照元:アメリカ労働省労働統計局-Job Openings and Labor Turnover Summary – 2026 M06 Results
アメリカの公正労働基準法(FLSA)には、雇用主に対する退職金の支払義務を定めた規定がないため、ポジションクローズにおいても契約内容や社内規定を確認する必要があります。
アメリカでの退職金は、雇用主と従業員(または労働組合などの代理人)との間で個別に締結した合意や、従業員ハンドブックなどの社内規定に定められている場合に支給されます。また、会社側が訴訟リスクを回避するために、従業員に対して独自に提示する形で退職金が支給されるケースもあります。
雇用契約書や社内規則で約束されているはずの退職金が、ポジションクローズ時に会社側から支払われない場合、アメリカ労働省の従業員給付保安局(EBSA)へ相談し、支払いの履行に向けて公式な援助を求めることが可能です。
参照元:アメリカ労働省-Severance Pay
アメリカで働くなかで突然のポジションクローズを告げられたとしても、パニックにならずに自身の権利を守るための適切な行動をとることが大切です。
アメリカには労働者を守るための法規制が存在しており、これらを活用することで不当な労働環境に対抗できます。
ここでは、ポジションクローズを宣告された際に労働者が取るべき具体的な対処法を紹介します。
退職合意書にサインする前によく確認する
アメリカ企業はポジションをクローズする際、退職金などの支給と引き換えに「将来にわたって企業を訴えないこと」を誓約させる退職合意書を提示することが一般的です。
しかし、企業に急かされたとして内容を理解しないまま焦って署名をしてはいけません。ポジションクローズに伴って退職合意書にサインする際は、署名する前に書類をよく確認しましょう。
退職合意書の内容が、法律を遵守したものであるかどうかを確認します。
たとえば、年齢に基づく検討期間や解約期間の保障ルールがあります。もし40歳以上であれば、高年齢者雇用保護法(OWBPA)に基づき、退職合意書をじっくり検討するための期間(個人であれば最低21日間、集団人員整理であれば最低45日間)が義務付けられています。また、署名後であっても7日以内なら解約できる期間も、法律で定められています。
また、本来は放棄できないはずの権利に関して、不当に放棄を要求する記載がないかどうかを確認することが必要です。
退職合意書にサインしたとしても、雇用機会均等委員会(EEOC)への差別被害の申し立てや調査へ協力する権利、失業保険や労災補償を申請する権利を、企業が不当に制限することは連邦法上で禁止されています。
弁護士に相談する
アメリカでのポジションクローズに際して退職合意書にサインする前には、信頼できる労働専門の弁護士を確保し、契約書の内容をプロの目でリーガルチェックしてもらうことが重要です。弁護士に違法な権利制限条項がないかどうかを確認してもらい、無効化しましょう。
なお、高年齢者雇用保護法(OWBPA)により、40歳以上の労働者に対する退職合意書には、企業側が「サインする前に弁護士に相談すること」を書面で明記することが義務付けられています。
退職金の交渉を行う
ポジションクローズの際に提示された退職金の額や条件が不十分であると感じた場合は、会社側と追加の退職条件について交渉を行うことが推奨されます。
退職合意書が法的に有効となるためには、従業員が「すでに受け取る権利があるもの(最終月給や未消化の有給休暇手当等)」とは別に、「本来受け取る権利のない追加の価値(追加退職金など)」を企業が提供する必要があります。
もし企業が追加の金銭を提示せずにサインを迫る場合は不当であることを指摘し、交渉材料にしましょう。
また、在籍期間や職務での貢献をアピールすることも有効です。
これまでの勤続年数や業績での貢献、そして訴訟を提起しないという譲歩を対価として、数ヶ月分の給与やベネフィットの継続期間を上乗せするよう要求します。
転職活動に切り替える
不当なポジションクローズへの対応と並行して、生活費を確保しアメリカでのキャリアを継続するために、速やかに次の職場への転職活動へ移行することも重要です。
ポジションクローズという非自発的な理由で失職した場合、速やかに州の労働部門へ失業保険の申請を行いましょう。
なお、退職合意書に「失業手当を申請しない」と禁止事項として書かれていても、その制限条項は違法です。労働者には失業手当を申請する権利を有しています。
ポジションクローズによって仕事を失った場合、焦燥感が生じるかもしれませんが、転職活動には焦らずに取り組んでください。
アメリカの連邦取引委員会(FTC)の発表によると、失職して焦る求職者をターゲットに、有名企業のリクルーターを装って個人情報や登録料などを騙し取る悪質な転職詐欺が急増しています。転職活動の際は、紹介された求人の連絡先が本当に公式なものであるかを慎重に確認することが必要です。
参照元:
アメリカ雇用機会均等委員会(EEOC)-Q&A-Understanding Waivers of Discrimination Claims in Employee Severance Agreements
連邦取引委員会(FTC)-FTC takes steps to stop deceptive and unfair labor market practices
アメリカの労働環境におけるポジションクローズとは、特定の職務を廃止することを指します。
ポジションクローズが行われる主な理由は、事業規模の縮小・部門の統合・人員の削減などの経営上の都合です。ときには、企業の恣意的なリストラを目的としたポジションクローズが行われることもあります。
アメリカには理由なく解雇ができる「随意雇用」という大前提が存在しますが、一方で公序良俗や黙示の契約、差別禁止といった労働者を保護するための判例上の例外や連邦法がしっかりと整備されています。また、退職パッケージが提示された際は、EEOCやNLRB、OWBPAの法的な条件を満たしているかを慎重に見極めることが、不当な不利益を避けるために重要です。
万が一理不尽なポジションクローズ通告に直面したときには、正しい知識を身に付けて自身のキャリアを守りましょう。
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