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アメリカの退職金事情とは?401(k)の仕組みや解雇手当について解説

Date Updated:2026年8月21日

閉じたノートパソコンの上で米ドル札を広げるスーツ姿の女性の画像 目次

  1. アメリカにおける退職金の基本事情
  2. アメリカの退職金代わりとなる「401(k)」とは
  3. アメリカの退職金に相当する「解雇手当」とは
  4. アメリカで転職した場合の退職金等の手続き
  5. アメリカの退職金に関するよくある質問
  6. まとめ

このページのまとめ

  • アメリカでは、日本のような企業主導による一括支給の退職金制度は一般的ではない
  • 退職一時金制度の代わりとして、自ら老後の資産形成を行う「401(k)」が主流である
  • 会社都合の解雇やレイオフの際には「解雇手当」が支給されるケースが多い
  • 転職時には、既存の「401(k)」の資産を残したり移管したりする手続きが必要となる

「アメリカに退職金はあるのだろうか」と疑問をお持ちの方もいるでしょう。結論から述べると、アメリカには日本のような一括支給の退職金は存在しません。自ら資産形成を行う「401(k)」や、レイオフ時および早期退職を募る際の「解雇手当」が主流です。

 

本記事では、アメリカの退職金事情や401(k)の仕組みについて解説します。転職時の401(k)の手続きもまとめているので、渡米前の情報収集にお役立てください。

アメリカにおける退職金の基本事情

ビル群の中にあるアメリカ国旗の画像

「そもそもアメリカに退職金制度はある?」と気になっている方もいるでしょう。ここでは、アメリカにおける退職金の基本事情について解説します。

 

アメリカに退職金制度は存在しない

日本では、勤続年数に応じて、退職時に会社から一括でまとまった退職金が支払われる慣習が広く定着しています。しかし、アメリカではこのような仕組みの退職金制度は一般的ではありません。法律上においても「退職時には必ず退職金を支払う」といった決まりはなく、退職後の資産形成は給与からの天引きや個人での投資、会社の企業年金制度を通じて計画的に行うのが主流です。

 

なぜアメリカには退職金制度がない?

アメリカに一括支給の退職金制度がない背景には、流動性の高い労働市場と代替制度の普及があります。

 

アメリカでは、一つの企業に長く勤めることだけでなく、自身の専門性を高めながら最適な環境を選択していく働き方も尊重されやすい文化です。そのため、個人の主体的なキャリアアップを後押しする環境が整っており、日本に比べて労働市場の流動性が高い傾向があります。入社から数年で転職するケースも珍しくないため、1社に長く勤めることを前提とした一括支給型の退職金システムは市場にマッチしにくいといえるでしょう。

 

また、退職金の代替制度となる確定拠出年金「401(k)」が広く普及していることも要因の一つです。かつてはアメリカでも、将来の支給額を保証する確定給付型の年金を提供する企業が存在していました。しかし、運用リスクやコスト面の問題から、現在では従業員自身が運用手法を選べる「401(k)」の導入が主流となっています。

アメリカの退職金代わりとなる「401(k)」とは

SECURE 2.0 Actと書かれた書類とアメリカ国旗とアメリカ紙幣の画像

「401(k)」とは、アメリカの多くの企業で導入されている「企業型確定拠出年金制度」のことです。日本のような一括支給の退職金制度が主流ではないアメリカにおいて、企業からの拠出サポートを受けながら従業員が自ら投資運用を行って退職後の生活資金を形成する仕組みであり、実質的な退職金の役割を果たしています。

 

ここでは、アメリカにおける「401(k)」の重要性や仕組み、税制上の利点について見ていきましょう。

 

アメリカで401(k)が重要視される理由

アメリカのビジネスパーソンにとって、「401(k)」は退職後の生活資金を確保するための非常に重要なツールです。アメリカにも公的年金制度が存在しますが、年金だけで現役世代と同等の生活水準を保つことは容易ではありません。そのため、これまでの生活を維持しながら病気や緊急時に備えるためには、「401(k)」を活用した主体的な資産形成が不可欠であるという認識が広く浸透しています。

 

就職活動や転職時の福利厚生チェックにおいても「401(k)」の有無や企業側からの費用サポートの条件が、給与と同等以上に重要視されるポイントとなっているのが実情です。

 

企業型確定拠出年金401(k)の仕組み

企業型確定拠出年金である「401(k)」は、従業員が毎月の給与から一定割合または一定額を積み立てて自ら運用を行い、その成果によって将来受け取る資産額が変動する制度です。「401(k)」の従業員拠出には年間限度額が設けられており、アメリカ内国歳入庁(IRS)の発表によると、2026年の基本の給与天引き拠出上限は2万4,500ドルとなっています。1年ごとに見直されるため、積み立て手続きを行う際は最新の情報を確認するようにしましょう。

 

また、多くの企業では、従業員が拠出した金額の一部を会社側で上乗せする「マッチング拠出」を福利厚生の一部として提供しています。企業によって追加拠出の有無や上乗せされる割合は異なりますが、従業員にとっては効率的に老後資産を増やせる大きなメリットの一つです。

 

401(k)における税制上の優遇措置

「401(k)」がアメリカで有力な資産形成ツールとされる理由には、税制上の手厚い優遇措置も含まれます。以下は、従来の401(k)と、米国内国歳入法第402A条に基いて2006年に導入されたロス401(k)を比較した表です。

 

種類拠出時の税金運用益への課税受給時の税金
従来の401(k)非課税非課税(課税の繰り延べ)課税(所得税)
ロス401(k)課税(所得税)非課税非課税(条件を満たした場合)

 

従来の401(k)では、拠出額がその年の総所得から控除されるため、毎年の所得税を節約できます。運用中の利益も課税が繰り延べられるため、資産を引き出すまで課税されません。

 

一方で、ロス401(k)では拠出時は税控除を受けられませんが、積み立て開始から5年経過後かつ59.5歳以降に引き出す場合、運用益を含めた受給額の全てが原則非課税となります。

 

参照元:IRS

アメリカの退職金に相当する「解雇手当」とは

アメリカ国旗をバックに段ボールに入ったデスク用品を持つ男性の画像

「解雇手当」とは、会社都合による解雇(レイオフ)や早期退職者を募る際などに、企業から退職する従業員へ支給される一時金や手当の総称です。

 

アメリカの法律には、企業に解雇手当の支給を義務付ける規定はありません。しかし、多くの企業では雇用契約書や就業規則、または解雇時の合意書に解雇手当に関する定めを設けています。「退職金パッケージ」とも呼ばれ、突然の離職に対する生活補償やこれまでの貢献への労いという意味合いをもち、日本における退職金に相当します。

 

解雇手当の支給条件

解雇手当が支給される主なケースは、企業の業績悪化によるレイオフや部署閉鎖、再編に伴う解雇などです。詳細な条件は企業ごとで異なりますが、基本的に従業員自身の重大な規律違反による懲戒解雇や自己都合退職は支給の対象外となります。

 

手当に含まれる内容の確認・交渉ポイント

解雇手当に含まれる内容を確認する際は、一時金の金額だけでなく、以下の条件が含まれているかも確認することが重要です。

 

  • 健康保険の継続サポート
  • 再就職支援
  • 未消化の有給休暇の買い取り
  • 企業が上乗せした拠出金の権利確定について など

 

場合によっては、離職後の健康保険料を負担してもらう期間や、拠出金の権利確定の前倒しに関して交渉できる可能性があります。なお、解雇手当の支給基準や内容は、企業規模や勤続年数、職位、退職理由などによって異なる点を念頭に置いておきましょう。

アメリカで転職した場合の退職金等の手続き

ノートパソコンを広げ電卓を打つ男性の手元の画像

アメリカで転職する場合、以前の職場で積み立てた「401(k)」の資産の扱いには、主に以下の4つの選択肢があります。

 

  • 以前の会社にそのまま401(k)の資産を残す
  • 転職先へ401(k)の資産を移す
  • 個人退職口座(IRA)へ資産を移す
  • 401(k)の資産を全て引き出す

 

以前の会社にそのまま401(k)の資産を残す

受給額に満足していたり、ほかの制度の手続きがまだ済んでいなかったりする場合は、退職後も以前の会社にそのまま資産を預けておくことが可能です。特別な手続きは少ないため、運用の管理変更の手間を省けるメリットがあります。

 

ただし、口座残高が一定額未満の場合は、企業から払い出しや移管を求められる可能性があるため注意しましょう。また、当該口座には新規の拠出はできず、口座管理手数料が全額自己負担に切り替わるケースもあります。

 

転職先へ401(k)の資産を移す

新しい勤務先が「401(k)プラン」を提供している場合、前職の資産を新プランへ直接移管(ロールオーバー)することができます。複数の資産を一元管理できるため、資産状況の把握や運用商品の見直しが容易になる点がメリットです。また、金融機関へ直接資金を移動させる手段をとることで、現金の引き出しとみなされず、所得税の課税や早期引き出しのペナルティを回避できます。

 

個人退職口座(IRA)へ資産を移す

証券会社などの金融機関で個人向け退職口座「IRA(Individual Retirement Account)」を開設し、そこへ資産を移す方法です。この選択肢のメリットは、企業の「401(k)」に比べて株や投資信託など、選べる投資商品のバリエーションが多い点にあります。運用コストの安い商品を自分で自由に選べるため、こだわりながら運用商品を比較・選択したい方に適しているといえるでしょう。

 

ただし、誤って前職の「401(k)」と異なるタイプのIRAへ移管してしまうと、その時点で多額の所得税が発生してしまうため、口座を開く際は必ず種類を合わせる必要があります。

 

401(k)の資産を全て引き出す

前職の「401(k)」口座を解約し、全ての資産を現金化して手元に引き出すことも可能です。ただし、原則として59.5歳未満で資産を引き出す場合、通常の所得税に加えて10%の早期引き出しペナルティが課されます。節税効果が失われるだけでなく、手元に残る金額が本来の資産より少なくなってしまうため、緊急時以外の早期現金化は推奨されていません。どうしても現金が必要な緊急事態を除いては、前述した新しい勤務先の「401(k)」またはIRAへの移管を選択するのがおすすめです。

アメリカの退職金に関するよくある質問

黒板に書かれた複数のドル袋とクエスチョンマークを眺める男性の後ろ姿の画像

ここでは、アメリカの退職金に関するよくある質問とその回答をまとめました。

 

アメリカと日本の退職金制度の違いとは?

両者の最も大きな違いは、「一括支給の退職金制度の有無」と「資産形成の責任主体」にあります。日本では、会社の退職金規定に基づいて、退職時に一括して一時金が支給される仕組みが主流です。

 

一方、アメリカではこのような退職金制度は一般的ではありません。代わりに「401(k)」などを通じて毎月の給与から一定額を積み立て、企業からの上乗せ拠出を活用しながら、従業員自身が主導して老後資金を運用・形成するスタイルが広く定着しています。

 

アメリカに定年退職年齢や定年退職金はありますか?

原則として、アメリカには法律に基づく一律の定年退職年齢は存在しません。

 

厚生労働省の「アメリカの雇用における年齢制限禁止法について」によると、アメリカでは「年齢差別禁止法(ADEA)」によって、40歳以上の個人に対する雇用の権利が厳格に保護されています。そのため、安全性が重視される一部の特殊な職種を除いて、年齢を理由とした雇用期間の上限(定年制)を設けることは違法です。

 

「定年退職年齢」という概念自体がない以上、それに伴う一律の定年退職金も存在しません。労働者は自分の資産状況やライフプランに合わせて、「何歳まで働くか」「いつリタイアするか」を自由に決定することができます。

 

アメリカ企業での採用時に退職金などの交渉は可能ですか?

日本の退職一時金に当たるような規定を個別に新設してもらう交渉は困難ですが、内定が出たあとの条件面談の際に、解雇手当・退職金パッケージの内容を交渉することは可能です。たとえば、「401(k)プラン」における企業の上乗せ拠出の割合や受給権が確定するまでの年数などは、採用時に頻繁に交渉が行われています。提示された内容をそのまま受け入れず、隅々までしっかり確認したうえで、自身のリタイアメントプランに見合った条件を前向きに打診してみましょう。

 

参照元:厚生労働省

まとめ

アメリカ合衆国財務省発行の小切手と100ドル紙幣の画像

アメリカでは、日本のような一括支給型の退職金は一般的ではありません。その代わり、自身のプランに合わせて資産を形成・運用できる「401(k)」や、会社都合で解雇された場合の「解雇手当」がその役割を果たしています。就職・転職の際は額面給与だけでなく、「401(k)」のマッチング拠出の割合や解雇手当の内容なども含めた条件をしっかり見極めたうえで応募先を選定しましょう。

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